蹄の内部(葉状層)に
炎症が起こっていると考えられて臨床的にこのように命名されたが、かならずしも病理学的な組織病態を正確に反映した名称ではない。原因・要因が様々であることから、本症の発生は様々な病態カスケードの終末像と考えると理解しやすい。馬では葉状層に存在する基底膜が損傷をうけて蹄壁側(表皮葉)と真皮側(真皮葉)の接着が傷害された結果、蹄壁と真皮が剥がれる傾向がある。このため、蹄葉炎は基底膜疾患basement membrane diseaseであると定義する者もいる。蹄壁と真皮の剥離性変化は、続発的に蹄内部の骨(末節骨/蹄骨)が下方に変位することを許す。このため、骨より下方に存在する蹄底真皮が上からは骨に、下からは硬い蹄底角質に挟まれて挫滅することとなる。症状が進行して蹄底部から強い腐敗臭で初めてそれと気づかれることも少なくない。現在は、独特の立ち肢勢、
レントゲン技術による蹄骨の変位、歩様の乱れなどの初期症状が出た段階で発見される。主な原因として
下痢や
感染症などの全身疾患、
穀類の過剰摂取による腸内細菌叢の変化による
内毒素の発生が挙げられる。
競走馬では、骨折した肢蹄をかばうようにその対側肢が自重を一身に受けた場合、その蹄に血行障害が起こり、最終的に蹄葉炎の発症に至る例が多い。後肢より前肢に多く発生する。雌雄差はない。
症状が軽度の場合、脚の負担を軽くする特殊な蹄鉄、穀類の不摂取や適度な運動により回復する例もあるが、重症の場合は投薬治療や、最終的に蹄壁の除去や深屈腱の切断など
外科治療を行う。しかし骨折が原因の場合は
予後不良であることも少なくない。蹄骨がまだ変位する前に発見された場合は、種々の処置によく反応して回復することがあるが、発見が遅れた場合は症状の進行を阻止するのは困難である。たとえ、症状が改善されたとしても極めて長期の治療期間を有し、また、正常な蹄形に戻ることは少ない上に慢性的な跛行が残ることもある。このため、重症例では、
安楽死の処置が取られる。以前は、馬にとっては致命的な病気の一つとされていたが、競走馬では対処法が確立されてきており、重症化せずに回復した結果、競走に復帰する例も多くなっている。