ピロリン酸など、通常の
リン酸化合物においては、リン酸無水物結合の加水分解による切断時の
標準自由エネルギーの減少は3000cal/mol程度である。それに対して、ATPの加水分解における減少は7000cal/molにも達することが実験的に確認されている。それ故、この種のリン酸結合を有する化合物を
高エネルギーリン酸化合物と呼ぶ。なお、反応の自由エネルギー変化が大きいのであって、P-O間の
結合エネルギーは一般の化合物と比べて特に大きいわけではない点に注意が必要である。
生体内の物質
代謝における反応には、
化学ポテンシャルの変化から自発的に進行すると予測される方向とは異なる方向に進行するものが多い。そのほとんどは、
高エネルギーリン酸結合の切断反応と共役することで実現されている。したがって、
高エネルギーリン酸化合物の持つ生化学的な意味は大きい。言い換えると、筋肉の収縮や濃度勾配に逆らった物質輸送は、
高エネルギーリン酸結合の関与によって初めて成し得るものである。