トランスポゾン (Transposon) は
細胞内において
ゲノム上の位置を
転移 (transposition) することのできる
塩基配列である。
動く遺伝子、
転移因子 (Transposable element) とも呼ばれる。
DNA断片が直接転移するDNA型と、
転写と逆転写の過程を経る
RNA型がある。トランスポゾンという語は狭義には前者のみを指し、後者は
レトロポゾン (retroposon) と呼ばれる。レトロポゾンは
レトロウイルスの起源である可能性も示唆されている。レトロポゾンのコードする
逆転写酵素は
テロメアを複製する
テロメラーゼと進化的に近い。
DNA型トランスポゾンが転移するためには
トランスポザーゼ (Transposase、「トランスポゼース」とも言う) と呼ばれる
酵素が必要であり、これはトランスポゾン自身がコードしている。トランスポゾンは < transposon > の様に末端に逆向きの
反復配列を持っており、トランスポザーゼはこの配列を認識してトランスポゾンをゲノム配列から切り出す。そしてトランスポザーゼは適当なゲノム配列に再度トランスポゾンを挿入する。レトロポゾンは転写を受けた後、自身がコードする
逆転写酵素によって
mRNA から
cDNA を作り出し、再度
染色体に挿入される。いずれも遺伝子領域に挿入されると変異を引き起こすし、DNA型は切り出しの際に周りの
DNA配列を削り
染色体異常を誘導することもある。また転移が不完全に起こることで染色体にジャンク配列を残す。
ショウジョウバエにおけるトランスポゾンはP因子が有名。P因子はわずか50年程前に水平移動により自然界のショウジョウバエに持ち込まれたと考えられている。それまでに野外から採集されていた多くの系統はP因子を持たない。以前から研究室で維持されていた系統と、野外から採集してきた系統とを交配させると、高頻度で
不妊を引き起こす Hybrid dysgenesis と呼ばれる現象が生じ、この原因として発見された。このように新たにゲノムに導入されたトランスポゾンは高頻度の転移を起こし、ゲノムを改変してしまうことが知られている。現在P因子は人為的に改変され、遺伝子導入の
ベクターとして用いられている。